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明治の時計塔

9. 京屋時計店銀座支店の時計塔

「東京名所之内 銀座煉瓦石」 探景

探景(井上安治) 多色木版摺 明治21年2月19日印刷

明治21年2月23日 出版
著作印刷兼発行人 浅草区並木町十九番地 清水 文蔵
《 個人蔵 》

明治初期の銀座のシンボルであった京屋時計店の銀座支店時計塔を画題にして精確に描かれた一枚ものの錦絵。 店の中にはボンボン時計が見えます。 錦絵全体に目をやると、鉄道馬車や洋服姿の人々、また桜や柳の街路樹がいかにも繁華街らしいですね。 馬車に書かれた文字は、上の黒字が「東京市街鉄道馬(車)」、下の赤字白抜きが「鉄道馬車」となっています。 (正式名は「東京附下市街馬車鉄道」のはず。)
「煉瓦館」「時計塔」と「馬車鉄道」と言う近代化の象徴がモチーフとなっています。

1872年(明治5年)2月26日に銀座・築地一帯を焼き尽くす大火が発生したことをきっかけに、 煉瓦造りの街として建て直しが始まり、江戸から明治へ変貌するかのように西洋式建築の街並みの「煉瓦通」が出現しました。 京屋銀座支店の時計塔は、その 銀座煉瓦街表通に建設された明治初期(明治9年頃)唯一の時計塔でもあります。

時計塔の機械は、本店の外神田の大時計と同様に、明治8年頃、 外神田の本店と同様にファーブルブランド商会から輸入した舶来機械の四方塔時計を設置したもの。 建設者は水野伊和造。 本店の日本風な角ばった様式と異なり丸みを帯びた洋風建築で、 ここは明治28年以降ヨーロッパ帰りの二代目水野太一が居住していましたが、惜しくも大正2年6月に店舗共々取り壊されました。

「東京名所 銀座通」 幾英

幾英筆 明治22年 多色木版摺 明治22年1月印刷

出版京橋区尾張町2丁目印刷兼発行者 佐々木豊吉
《 個人蔵 》

東京名所シリーズの内の一枚。 同じく、銀座4丁目の煉瓦通の時計塔(京屋時計店の銀座支店)と鉄道馬車が、やや広範囲にわたって描かれています。 「近代銀座の隆盛」がモチーフであったようです。
鉄道馬車や人力車が行き交い、洋装の紳士・淑女で賑わう様子は、まるで文明開化のショーウィンドウのようです。

鉄道馬車は明治15年に日本で初めて開通した「東京馬車鉄道」(新橋 ‐ 日本橋)で電化される明治35年まで活躍。 糞尿の問題で見た目ほどは快適ではなかったようです。
銀座の柳と歌われた植栽は、当初は松、楓、桜でしたが、松と桜が枯れたので、柳となりました。 この錦絵は、桜並木が鮮やかですね。

小林 幾英(こばやし いくひで)

飛幾亭などと号した、歌川 芳幾の門人 明治20年代明治開化絵の最後の時代に活躍した絵師。生没年不詳。

絵葉書

明治30年代中頃

通りには市電(明治36年より)ではなく鉄道馬車が走っているので明治30年代中頃の絵葉書と思われます。 右手の方に京屋時計店の時計塔がはっきりと写っており、京屋は角地であることがわかります。

時計塔を拡大して見ると、電信柱に碍子(がいし)が沢山付いていますね。 この時代は電気の普及のために昼夜兼用と夜専用などといろんな契約を分けて配電していたようで、 その分碍子の数が増えてこのように賑やかな電柱となり、そのおかげで電信柱は背も高くなっています。 銀座は契約数も多かったのでしょうね。 年代が若くなるに従って碍子の数は少なく、電信柱もスマートになってきます。


上段は手彩色、下段はモノクロ






THE GINZA STREET, TOKYO. (東京百景)銀座通り繁栄

明治後期

右側に京屋時計銀座支店、市電の左は玉屋商店 銀座3丁目5番地、 通りのはるか後方に見える時計塔は小林時計京橋支店です。 銀座通りは直線ですが、京橋でこの絵の左側に少し曲がっています。 そこで、小林時計店が正面に現れます。撮影点から丁度500mです。

FAMOUS OF THE VIEW TOKYO 東京名所銀座通り

明治後期

東京名所、銀座四丁目交差点のシリーズの一枚ですが左側の服部時計店を外して反対側を中心に撮った珍しいアングルの絵葉書です。 服部時計店の向かいの望楼付きの山崎高等洋服店(明治38年に前の中央新聞社を買収、関東大震災で倒壊延焼)の並びの奥に 京屋時計店銀座支店の時計塔が望む嬉しい写真です。

明治35年 銀座四丁目の地図

明治35年5月13日「東京京橋区銀座付近戸別一覧図」より

明治35年の銀座3丁目4丁目、尾張町1〜2丁目(後の銀座5丁目、6丁目)地図から、銀座4丁目附近を抜粋したものです。
赤矢印のところは、「時計商 服部金太郎」の服部時計店
青矢印のところは、「時計商 京屋支店 水野伊和造」

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