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材料より観たる時計

11. 頁52〜57

振り付

振り付

〔52頁〕


ウオルサムがんぎには他の到底模倣を許さない多くの特色があります。 例えばがんぎの最も重要な部分は衝動面(アンクル爪石の衝るところ俗に歯先と云う)であって、 この表面はダイヤモンドの研磨器で切り揃えてありますから、絶対的に正確であるのみならず、 同時にウオルサムの品質の標準に適合するように良く研磨されてあります。 然るに欧州製時計の衝動面はコムバウンド(一種の研き粉)を用いて手で磨くために、 研きをかける極めて重大な理由を事実上無効に歸してしまうところの彼の研き粉に依って、 常に其の表面が変化して来ます。 従って操縦機を組立てて居る個々の機構に害を及ぼすに至ることを吾々は前者との比較によって容易に窺い知ることが出来ます。

振付(THE MATCHER)

振付とは器械の組立てに先立ち、アンクルとがんぎの喰い合い、アンクルの鋤形と下げ石との関係其の他ひげ、天府等総て操縦機部分の操作を完全ならしむる作業を云う。

操縦機の運動の如何は三個の重要な宝石に支配されて居ります。即ち操縦機の章に於いて述べたように  【→ 54頁に続く】

〔53頁〕


二個のアンクル爪石とローラー(月形と称す)の下げ石とであります。 これらの宝石は一定の形に良く磨かれたルビーかサファイアの精妙な小石片で、時計が正確な時間を報じ耐久性に富む為には、 形の極めて正確である事と、磨きの良くかかって居ることが最も重要であります。 例えばウオルサム時計の爪石の衝動面(歯先)は良く磨かれてあるのみならず、使用さるる方の面は極度迄扁平であります。 此の面の相対するがんぎの歯先の面は丸く、従って爪石の衝動角とよく調和して居ります。 此のウオルサム特有の方法は世界の何れの時計にも見られない所であります。

更に他の特徴はウオルサムの二重月形操縦機(Double roller escapement)の構造であります。 下げ石は時計製造術の粋をあつめた美はしい石片で、即ち先細にして高圧を加えて支持穴へ打ち込むだものであります。 試みに諸君は時計師についてこれらのウオルサム時計の興味深い特徴を指摘させて御覧なさい。 さすれば美はしい独創的な細工について彼等が教えてくれる種々の事柄によって、 諸君はウオルサム時計を斯くも正確な信頼し得るものとなした所の洗練された技術や知識の諸君に教ふる所多きを見出さるるでありましょう。

〔54頁〕


ウオルサム受賞牌の一部

ウオルサム時計が世界の大博覧会に於いて受けたる賞牌の一部

〔55頁〕


ひげと天府

ひげと天府

〔56頁〕


ひげぜんまいと天府輪(THE HAIR SPRING AND BALANCE)

天府輪の構造や役目を述べるに先立って、先ずひげぜんまいを天府輪に組合わせることから説明しましょう。

振子が一定の度だけ左又は右に振れてそこで一旦止まって更に重力によって再び撃突点即ち動き出した原の点へ戻って行くように、 ひげぜんまいは天府輪の運動に対しては丁度前の場合に於ける重力の働きをなすのでありまして、 即ちアンクルの撃突によって運動する天府輪を今度はそれと反対の方向に戻す役目をなすもので、 これを反復して間断なく継続するのであります。

斯くしてひげぜんまいは天府輪の廻転速度、廻転角を定め、其の結果として時間を左右するものでありますから、 天府輪の重量及び大きさとひげぜんまいの強さとの間に満足な比が成り立つ様両者の組合わせが出来て居ると云うことが、 時計の正確には何より重要なことであります。 従って若し此比が誤られたならば時計として全然価値のないことは云う迄もありませぬ。

〔57頁〕


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