22. ラーヂ 【中央時計製造所】
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| メーカー | 製造開始年代 | 大きさ | 仕様・備考 |
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中央時計製造所 (名古屋) |
大正末〜昭和8年頃 | 外径十二吋半(33cm)、 文字板十吋 | 白木地塗、八日巻打方付き、 デュープレックス天府振 |
まさかこの時計の記事を書く日が来るとは思っていませんでした。 主に英国製の懐中時計に採用されていたデュプレックス脱進機を模した曲げても止まらない「THE GEARING ESCAPEMENT」を搭載する名古屋製の柱時計です。 当時の時計屋からは、「ラーヂ修理お断り」「ガンギ、天府等々の重要な部品の設計並びに仕上がりがが悪い」とされ嫌われ者のレッテルを貼られた時計でしたので 素人の私としては手を出しにくく入手を避けてきました。
ところが、ある日ネットオークションを見ていたらこの時計が出品されていて1件の入札があり、その方は古時計から機械を除去してミイラ時計?を作成するリメイク業者さんで、 質問欄に「もし落札出来たら電池式に交換したいのですが振子の扉はどこにありますか?」との書き込みをされていました。 それでも誰か適切な落札者が現れるだろうとオークションの成り行きを見ていたのですが、動かないとの説明があったからか結局その業者さん以外は誰も入札しない。 「ヤバイ、破壊される〜」と思ったらポチっと入札してしまい、そのまま落札となったのでした。
で、届いたこのラーヂ君ですが、自慢の脱進機周りがやっぱり壊れていました。 機械の固定ネジや機械のネジそのものがみんなユルユルで如何にも修理をあきらめて形だけもとに戻したやつでした。それもかなり昔の仕事な雰囲気です。 ヒゲはぐちゃぐちゃ、インパクトピン(振りピン相当)がない、その取付穴が複数ある。などなど。
ダメ元で直してみたところ思いの外あっさりと生き返りました。 当初柔らかめのヒゲを付けたため一時間に25分遅れましたが、それでも止まる気配無くゆったりと動き続ける名古屋製デュプレックスを眺めていたら、 この仕組みの実力の一端を感じたような気がします。 その後、固いヒゲに付け替えたら日差ゼロ分でビシッと動くようになって二度目のビックリ、 今はこの機械の評価としては案外いいやつな印象でそんなに嫌われなくてもいいんじゃない?って感じです。
この時計の実用新案出願は大正9年、登録が10年、 関東大震災を挟んで振子のように地震でも止まらない時計として販売を拡大し、戦前までの販売実績のようです。
その間に、商品名は以下の通り変遷していて、ラーヂ名で販売されたものが最も多いようです。 当時、ラーヂという名は自動車、自転車、他様々な商品に採用されていました。
- LIGHT(ライト)
- LARGE(ラーヂ)
- FIRST(ファスト)
写真5は背板のラベルですが、ライト名になっています。 ライトからラーヂへの過渡期は文字板と背板に書いてある商品名が一致しないことはあったようです。
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脱進機の構造を簡単に説明します。 アンクル式ではなく、ガンギの歯先が二段になっていて(写真8)直接ガンギ歯の先が天府のインパクトピンを蹴って天府へ力を伝えます。 細めの天真には切り込みがあります。 ガンギ車には長短それぞれ15の歯があって、短い歯は一段上に折り曲げられ、長い歯はケン先の役割をして天真に接してガンギ車の急な回転を防止しています。
写真9は欠損していたインパクトピンを作成するために長い鋼棒を差し込んだ写真です。 天真の切り込みとインパクトピンの位置関係が重要で、これを考慮してヒゲを保持する必要があります。
この脱進機の性質として機動性がないことがあげられます。 何らかの原因で停止した場合、機械を左右に振ってもアンクル式の機械のように動き出すことがほぼないため、 ガンギにちょっと衝撃を加えてやるなどの動作が必要になります。 組立に特有のコツがある、使い方に特有の儀式がある、こういったところが理解されずに時計屋の嫌われ者になってしまったのかもしれません。
当時の資料より
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