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時計技術の相互研究

1. ウオルサムリバーサイドゼンマイ入替の注意

ウオルサムリバーサイドゼンマイ入替は、入替に際して良く香箱の開け方が判らずそのまま手をつける結果、 後に取り返しのつかない飛んだ失敗をやることがありますが、これは一番真が上下から捻じ込みになって居りますので、 この場合の処方は先づ角穴車を一番真に取付け十分捻止をして香箱を左の指先にて十分つかみ 右指先にて角穴車を左廻しに弱く廻すと一番真の上部が取れてきます。

2. コロノメーターの分解掃除の時の注意

コロノメーターは普通の時計の様に分解に当たり決してゼンマイを巻いたままでテンプを外してはいけないのです。 ちょうどシリンのテンプを外したときの様に雁木(がんぎ)車が廻転致しますから、 若しそんな事をしたら取り返しのつかない事になります。 分解に当たっては第一にゼンマイを全部解いてそれから初めてテンプを外すことが肝心です。

3. カラフ付及打方等特別の時計

複雑なる装置の器械はハシキ、ネジ等が一見して同一の様でいてそれぞれ用途の差があるから 取り違へぬ様に各々其の一ヶ所に○○の小物を腕時計用半打箱を利用して各一個毎に整理して処理するがよい。

4. クサリ引き装置の時辰機

[問]私は一つ古い懐中時計を持っています。この懐中時計は特別脱進機を持っている。 即ち一つの幹の上に二つの爪石を持っている。その一つは脱進機の歯車の運行を司り、 他の一つは時計の脈打ちがはじまるまでの活動から脱進機の歯車を支柱の部分を閉鎖せんやうな役割をなすのである。 それは二つの香箱を持っていてこれが鎖に連結となるのである。御教示を乞ふ。

[答] 御問合の懐中時計は所謂懐中時辰機(クロノメーター)とも称すべき精密のものであると思ひます。 従って二個の香箱を有するその一個は時計の小軸の運転を司るものである。 これをヒュージと称しこのヒュージ一番車は推進力の平衡を司ると共に主要ゼンマイが巻きすぎた場合を防ぎ 又スプリングが漸次減力して時間が遅れるのを補正するのである。 この脱進機は海事船舶用のクロノメーターと同様の性能を有するもので又最高級のものと思ひます。

5. 位置に依り時差のおこる故障

[問]懐中時計の位置を斜めにすると、テンプの片重りの均衡が破れるかにして運行が停止する。 この煩わしき原因は何処にあるのでせうか、又時計の脱進機車輪も非常に振動が激しすぎると感ずるのです。

[答] 懐中時計を斜めに傾けた位置で運行の停止する原因はいろいろあって、一々此処に説明することは不可能であるが 一例を言えば脱進機の員数の一つのテンプの駆軸の不具合から起こるものである。
又は歯車の枠がエスケープメントの歯に接触することから起こるし、 又単一の故障でなくていろいろの原因が錯線して起こる場合もある。 だからよく其の器械を分解して再組み立てをなして、上下縦横斜等各方向に於いて故障を発見して修理する事が大切だ。

6. 折釘ネヂの頭の磨き

[問]折釘ネヂの頭の磨き方は如何にするべきや

[答] 完全なる磨きは時計製造工場に備へてある様な整備した器械に依らねば出来ない。 目打台にそのネヂを並べ(同一のネヂを三本以上なるべく離して)ラックで締めて初めて面を平らにする為に 油砥石で磨き後鉄磨粉(ジヤマンチー)を油に練って錫の台に付け指先の力を平均軽く早く磨く、 又この仕上げ磨きに鉄磨粉を用ひずにアスパーと言ふ石で磨き艶出しも出来る。

7. オシ鳥の焼入仕上げ方法

[問]オシ鳥の焼入仕上げ方は如何にしたらば宜しきや

[答] オシ鳥を平焼入した後きれいに黒味やカスを取り去りて銅板の上に載せ火に掛け、 其の色が紫色になった処で銅板より落せばよい。板の上にそのまま置いては余熱の為に青色以上に戻し過ぎるから注意を要す。

8. 仏蘭西(フランス)製時計の特別修理

[問]仏蘭西製時計---私は美しい仏蘭西製時計を所有しているが、この時計は特別の 螺旋(らせん)状傅導 の脱進機を備へていて、この螺旋状及び脱進車輪が大変に破損して取替えの必要があるやうに思はれるのですが、 この時計の部分品は何処で求めたらよろしいですか御知らせ下さい。
また、この時計の製造所名は機械の上に刻されているやうですが摩滅して明瞭を欠き文字の判読することができないのです。 若し必要ならば現品をお届けしてもよろしいと思います。

[答] 御問い合わせのものに全く適合する部分品の出来合は現在では手に入らんと思ひますが、 東京及び大阪の古い時計店にはあるのであらうかも知れません。 然しその時計と同じメーカーの部分品は恐らくありますまい。 若し引合の場合に破損した現品を材料店に送付したれば若し間に合ふ知品がないにしても新しく造って間にはしてくれるでせう。

9. 平ヒゲを捲上ヒゲに変更する方法

[問]平ヒゲを捲上ヒゲ(ブリグイット式)に変更し得るや、このヘヤースプリングは強くすべきが御教示を 乞ふ。

[答] 之はなかなか困難な事で、元々平ヒゲに出来ている器械はテンプ輪と折釘の隙間が少なくできているからである。 単に平らのヒゲを捲上げにすると言ふ事ならばできます。

10. アンクル爪石の取外し方法

[問]アンクル爪石を取外す時はランプで加熱していながら外すのですか、或ひはその他に良法ありましたらお教へ下さい。

[答] 加熱していながら丈夫な爪石に大きなアンクルが取付けてあるなら加熱せず共差支へないのですが、 反対にこれ等が弱き場合はランプに暖めるか少量のアルコールを小さな瓶に入れ煮ればアンクルのラックが解けてしまひます。

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