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懐中時計の基礎知識

11. シリンダー整動器の検査

シリンダー式では、他の部分の検査は同様であるが、整動器の異なる部分丈の検査に就いて講述する。

アンクル式天府は、一廻転四分の一から、一廻転二分の一迄の廻転をなすが、シリンダー式天府は四分の三廻転しかせないので、 之はアンドの構造上の及ぼす関係である。 ヒゲ・天府・ガンギ車・両ホゾ等の検査は、アンクル式の場合と同じである。 アンドとガンギ車との喰合は、深過ぎても浅過ぎても、共に良くないので、深過ぎたら、廻転が遅く且つ不活発となり、 或は廻転を停止することもある。 深過ぎた場合はガンギの歯先と、アンドの閉止面との衝突を来たさずして、ガンギ車の歯の開進面とアンドの開進面との衝突となり、 天府の廻転を小さくし、従ってガンギ歯は一定の時間停止することなく、チョロチョロとアンドの両端を飛び進むのであるから、 非常に時間が進む様になる。 それで余り深過ぎない程度で、ガンギ歯先が確実にアンドのロッキングフェースに落下して、天府が四分の三廻転をなす位に、 喰合程度がなって居るや否やを検査する。 正しき喰合は、ガンギ車の中心が、アンド真の中心を通過するのである。

次に、ガンギ歯とアンドの喰合の天地のユトリがあるや否やを、器械の方を上にした時と、文字板の方を上にした時との、 二つの場合共良く調べる。 それからアンドの内外両面、並両端に傷はないか、ガザ付きはしないか、曲がっては居ないか等を調べたら、 今度は振切止の検査をなす。

此の振切止は、アンクルの場合とは異なり、天府輪の一端と、天府押の下部とに各一本宛の小さき栓があるから、 之等が、固有の位置に正しくあるか、又天府輪の振切止の位置は、天府押にある振切止の正反対の位置、 即ち正しく相対する位置になければならない。 天府輪の振切止栓は、天府押の振切止全体に支へられて、より以上の廻転をなさない様にしてあるから、 此栓にかかる丈の長さがなければならない。 天府押にある栓が天府の反対の方に曲がって居れば、天府輪の栓は之にかからずして通過しきるので、 即ち振切を起こすから、こんな場合には天府の方に少し曲げるのであるが、天府輪に接触してはいけないから、 之等も十分検査する。 其他はアンクル式と同様であるから省略する。

アンクル式、シリンダー式の何れかを問はず、ビートの姿勢にあるや否やを検査することは忘れてはならない。 之は上達すれば、刻音のみに依って鑑別することも出来るが、併し之は殆ど正確と云ふ点迄であって、 精密に正確とは云へない。

出典 時計並蓄音機学理技術講義録 大阪時計学院
(大正時代)

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