時計の修理及び掃除が済んだら、組立に取り掛かるのである。
1. 瑞西式龍頭引出剣廻表車龍頭巻装置銘々式
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右の式に就いて、一通り組立法の説明をなし、他の異なりたる式に就いては、其異なる点のみを説明する。
先ず、ギチ車とツヅミ車とを、龍真に貫いて之を地板の其部に嵌め、ツヅミ車挺を充分に、ツヅミ車中央の凹所に嵌め込み、 此の二つの車を、指にて押さえ、静かに龍真を抜き去る。 之を荒々しく抜いたり、又は抜かずに其儘置けば、ツヅミ車挺が外れて、此の二つの車は離れ落ちる。 間には龍真は抜かずに、其儘置いてもいい様になったのもあるが、之は実地に当たったら直ぐ解る。
実は之より前に、全舞を香箱に嵌め込んで置くのであるが、全舞の入れ方について一通り説明する。 香箱を左手指先にて持ち、右手に全舞の外端五六分許りの所を持って、香箱内の全舞引掛に、全舞の外端を引掛けて少し入れ込み、 直に両手の指先で香箱の下部を支え、両方の拇指を以て、交互に嵌め込んでは押え、嵌め込んでは押えして、 中心に向かって進め入れ込むのであるが、此の両方の拇指は必ず一方の拇指で嵌め込み、確実に押さえ込んでからでなければ、 他の一方の拇指は必ず離してはいけない。 若しも一方の拇指で、未だ確実に押え込まない内に、今一方の拇指を離したら、全舞は強き弾力を以て香箱より飛び出し、 全舞も香箱も共に飛散するから、良く注意してやる。 全舞を全部入れ込んだら、香箱真を入れる。香箱真の引掛が、全舞の中心の切込穴に、確実に嵌まる様にして入れるのであって、 反対に嵌めない様注意せねばならない。 真が入ったら、今度は蓋を嵌め込む。蓋には大概一端に切みがあって、香箱には胴の外に小さき丸形の凹みがある。 之が即ち合印で、之等を同一線上に合わせて嵌め込む。 若しも香箱の胴に、此合印がない時には、香箱の全舞引掛の打込みに合わせる。 若しも之等の合印を無視して、勝手に嵌め込んだら、香箱が真に対して傾き、為に他の歯車や地板或は押等に接触して、 時計の運転を停止する様なことが往々ある。 蓋は香箱の縁より少しも出ない様に、キチット嵌め込まねばならない。 之れで全舞の嵌め込みが完全に出来たのである。
そこで、地板を左指先にて、文字板の方面を下に向けて撮み支へ、ヒゲ箸を右手に持ち、香箱を挟んで、 所定の場所に嵌め込み、次に香箱真を嵌め込む。 龍頭挺のネジと香箱真とが出て居るから、之等を押の所定の穴に入れ、指にて押へと地板との両面より壓して、キチット嵌め込む。 此の際注意を要する事は、ギチ・ツヅミの両車が完全に嵌まって、閂がツヅミ車の凹所に、嵌まって居るか否かと云ふことである。 若しも之等が完全に嵌まって居ない時には、香箱押を少しコヂ開けて、龍真を其二車に通し、閂を嵌め込んでから、 香箱押を押へ込み、然る後之をネジで締め付け、次に全舞巻車を香箱真に嵌めコハゼが、歯と歯の間に嵌まる様にして、 ネジにて締付けるのである。
次に二番車は、取離さず其儘としてあるのであるから、四番車を入れる。(二番車を取離してある時は之を先に) 次に三番車を入れ、二番と三番との押へは、大概一個となって居るから、之を取付けネジにて締付ける。 次に四番及び五番車を前同様にして取付ける。以上各車は、地板及び押のホゾ穴に確実に入れ込んでから、 締付けなければいけないので、若し、万一両方の穴に一方でも入って居ない時に締め付けたら、 ホゾを曲げたり折ったり、又は穴石を破損したりすることがあるから、注意を要する。
伝車の組立が終われば、今度はアンクルの取付けにかかる。 アンクル竿を、下駄歯に近くヒゲ箸にて挟み、地板のホゾ穴に、下ホゾを入れ、アンクル押を取付け、ネジにて締付けるのである。 締付ける前に上ホゾを完全に押のホゾ穴に入れたならば、左示指の先にて、ホゾが抜けない様に、押のホゾ穴の上を押えて居て、 ネジを締付けるのである。若しもホゾが穴より外れて居るのに締付けたなら、殊に此のホゾは小さいのであるから折れ易い。
次には、天府の取付けであるが、之は時計の各部分品の内で、最も取扱いに注意せなければ、破損したり、
時間の調整を狂わしたりするのである。
今迄通り左手指先にて器械を支え、アンクルの方を手前の方に向けて支持する。
そこで右手にヒゲ箸を以て分解の際と同様、確実に天府押を挟み、静かに天府をぶら提げた儘、器械の上に持って来て、
アンクル刺股に、タボ石が入る様にして、天真下ホゾを地板のホゾ穴に嵌め込み、直に押の足を地板の穴に嵌めて、
静かに押に、少しの震動も与えない様にしてヒゲ箸を仕事台の上に置く。
そして右手の加勢を受けて、左手の示指にて、柔らかに天府押の上を押えて、器械を支持する様に、持ち替えたら、
直に右手を放ち、ヒゲ箸を以て天府を静かに動かし、天真上ホゾを押のホゾ穴に入れる。
之がうまく入ったら、左手は其儘外れない様支持して居て、右手拇指の先を、押の足の上部の箇所にあて、
同じく示指と中指を地板裏面にあてて、天真に決して無理せぬ様、足がキチット地板に嵌り込んで、
押と地板が互いに密着する様に、押へ込むのである。
完全に押さえ込んだなら、左手は今迄の様に、やはり示指で押を押えた儘、右手でネジを入れて締付ける。
此のネジを締める時に、注意を要することは、今少しでネジを締付けてしまうと云う時に、左手示指を押より外し、
時計を少し動かして、天府を震動せしめつつ締付けるのである。
天府の震動は、両ホゾが完全に、両ホゾ穴に入って居って、且つ又押がホゾを圧迫して居ないと云う証拠であるから、
若しも天府の震動が其途中に停止する様なことがあれば、直にネジの締め付けを止めて、停止原因を探り、
之を直してから、又天府を震動せしめつつ締付けるのである。
2008.11.16 作成中 続きます・・・
出典 時計並蓄音機学理技術講義録 大阪時計学院
(大正時代)
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