10. M式水銀接点 REX電池時計
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| メーカー | 製造年代 | 大きさ | 仕様・備考 |
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販売:シチズン商事株式会社 製造:新陽舎(東京都武蔵野市境 895番地) |
昭和30年頃 | 全高40cm、幅20p、アルミ5吋ペイント文字板 | 水銀接点式、単一が一個1.5V、報時機能なし、秒針なし |
シチズン商事の謎クロック
昭和20年代も半ばになると物の生産が増えて売手市場から徐々に買い手市場にシフトしていったようで、 お客の欲しいものを作るために営業部門を独立させて子会社化する動きが広がりました。 シチズン商事は昭和24年6月に営業部から独立したもので、31年末には時計屋のメッカとも呼ばれた御徒町の昭和通りに商事ビルが新築されます。 ウオッチでは共同出資会社の日東時計の「らんざん」なども扱いました。 シチズン商事はシチズン時計や共同出資会社に対して好きなものを注文できる、その代わり作らせたものは売り切るという原則でやっていたそうです。 シチズンのクロック謎時計は、営業の好きなものを工場に好きなだけ注文するという言わば初期の市場トライアルの営業スタイルから生まれた申し子なのかもしれません。 全然売れなかった、やっちゃったシリーズの回顧録で確認しているものに以下があります。
- 掛時計ファネット(富士電機KK製)
- 三宅さんがやった・・・水銀接点式の電池時計(製造元記載なし)
- 太田さんが出した目覚し時計(名古屋の三浦)
この時計は、電気→空気→エスケープメントの組み合わせで従来の同期モーター時計の欠点を除去し、 実用上のサイクル、電圧変化を克服した構造簡易な電気時計。 家庭用100V電源を使用し原動力には簡単なポンプを使用している。 空気ポンプが圧縮空気を発生させて風車を廻し風車の開陳力をエスケープメントに結合したもの。
詳細記述なし
詳細記述なし
ここで紹介するM式水銀接点REX電池時計は中段のもので、今回現物を見たことで製造元は新陽舎であることがわかりました。
M式水銀接点時計の種類と特徴
種類は以下の二つだと思います。
- パロック : これは丸型で振り子の見えないもの
- REX : ここに掲載の文化型掛時計
パロックの簡単な図面があります。
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パロックとREXの作動機構は基本は同じです。 REXはコイルが二つあるように見えますが片方はダミーです。 100Ωの抵抗はREXは裏側の電池ホルダー近くについています。
特徴は作動機構図と同じ資料に以下の通り記載されています。
- 機構は高性能並びに高精度を期するため、精密に設計されて居ります。
- 直接、間接材料は凡て最適材を選び、厳密な検査を経たものであり、 摩擦に対し損傷のない優秀なものであり、各部品等も同様厳密な試験済のものであります。
- 振りペラは二枚バネを用い、歪みをなくし、振子の振りむらのないよう作られて居ります。
- M式真空水銀接点は、パロックの部品として特筆大書すべきもので、【発明番号186740、公告昭和25年】 M式水銀接点には多くの特徴を持って居り、在来の接点の欠点は、此の接点にはあり得ません。
- 電池は一般市販の単一乾電池(1.5ボルト)なれば、どれでも差し支えありませんが、 成る可く携帯ラヂオ用特単乾電池が永持ちし、同時に漏液等の点でも安心であります。 パロックは、これをつけて販売して居ります。此の電池一ケで一年以上持ちます。
- ガンギ送り爪、これは普通振り竿に付随しておりますが、パロックに於いては別の一部分を構成し、 レバーにより振り竿と連動して働いております。 そして機械調整上非常に便利です。
REXの機械
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金色の長い短冊形の真鍮製の板にすべての機械が取り付けられおり、 機械は箱から丸ごと着脱できるようになっています。 これは、 第一に角度調整が必要な水銀接点が振り竿に取り付けられていること、 第二に特徴の6つ目にある爪の調整が機械と振り竿の位置関係にあること、 第三に振りペラが0.06mm程度の極薄であり、中抜き形状の二枚バネであるため脱着時に損傷しやすいこと、 このあたりが理由と思います。 時計の機械は直径3.5cm程度で懐中時計サイズです。 新陽舎の製品でありながら、それまでの天文時計ベースの堅牢なクロノメータームーブとはまったくの別物です。
なおこの時計は時計屋がさじを投げた感じのジャンク状態で入手しました。 写真10の通り振りペラが折れていたため二枚バネの形状は難易度高なので諦めて0.05mmのSUS一枚もので作り直しましたが、 最近の材料は0.01mm単位できっちり精度のでているものが入手できるからか、精度もでて振りむらがでている様子もないです。 (ちなみに昔の0.1mm程度の材料で試作・テストした際は一日に90分進みました、汗) またリード線はビニールの被覆がカチカチになっていて触るとポキポキ折れてしまったため、写真で白く見える部分はもともとは赤い線だったのですが新品で引き直しました。 さらに文字板自体は短冊ベースにネジ止めですが、文字板外周の飾りの金色枠が内部にある小さい爪を文字板外周の切り欠きの合わせてセットし、 左右にスライドさせてロックする仕様になっていたようで、 これが難解すぎて爪は折れているわ文字板外周はガタガタぐにゃぐにゃだわってことで、 爪は一個だけ残して他の二点は金色枠に穴開けて素直にネジ止めする仕様に改造してしまいました。
特徴にも書いてないように、この時代に流行した中三針ではありません。 秒針はつかない時計です。付けなかった理由は特徴6の調整上便利なレバーとの兼ね合いな気がします。
製造時期の考察
秒針がないのは少し寂しいが、 振り子式でありながら時計が多少傾いていても問題なく動き、 水銀接点化したことで調整も簡単、高耐久・高精度でメンテナンスもしやすい優れた時計という印象です。 接点式の欠点が克服されて大きく進展した良い時計です。
M式水銀接点パロック電池時計の取扱方と修理法には昭和25年には特許を取得したとあります。 すぐさま市販されればマグナー電磁時計くらいの現存数があってもいいですし、時計そのものの優秀さは水銀接点式のほうに軍配があがりそうです。 それにもかかわらずほとんど現存していないということは、特許取得後市販されるまでに何らかの事情で年数を要したのかもしれません。 この時計の刻印から製造時期は昭和30年頃と推測しています。 シチズン商事が取り扱った頃には時すでに遅し・・・で間もなくトランジスター式がでてきてしまい優位性が消え失せてしまった不運な時計なのではないかと思います。













