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懐中時計の基礎知識

6. 押開蓋の修理

之は、古くなれば蓋が閉じなかったり、又は具合良く開かなかったりする様になっているものが多い。 よく開かないのは、蝶番と押開バネとに少量の注油をなし、二三分間も之を動かしたら大抵良くなる。 蓋が閉じない様になったのは、大概蓋閉バネの引っかかる所の、蓋の内側が摩滅するか、又は無理にコジ開けた為に取れて居るか、 何れかであるから、先ず其箇所を鑢を斜めにして引掛ける様に少し摺り込むと同時に、蓋閉バネが、少し外方に、 即ち龍頭の方に出る様に、其バネの下の胴を少し鑢にて摺り取るのである。 此際はバネを少し内側に押上げて居て摺ればよい。
此蓋閉刎と、押開刎とは別箇のものならず一本であって、之を総称して側ハジキと云ふ。 之が折れた時は、鋼にて作ってもいいが、之は作るのに中々困難であるから製品を取寄せた方がいい。

7. 緩急針の修理

之が破損せしものは、其の製作には高価なる器械が無ければ、完全に出来ないから、見本を送って取り寄せる。 ヒゲ挟みの破損せしものは、真鍮を適当の大きさに削って、打込んで作る。

8. ヒゲの修理

ヒゲ全舞が曲がったり、縺れたりしたのは、或る程度迄は直すことが出来る。 横即ち平面的に曲がったのは、ヒゲ箸と針とを以て直すのである。 ヒゲは大分曲がって居る様に見えても、注意して調べれば一二ヶ所を直したら、大概よくすることが出来る。 之を直すには内部の曲がりより、順次に直して外端に及ぼすがよい。

今度は、上下即ち立体的に曲がったものは、反対に引き伸ばしたらよい。 其の曲がり方が、ヒゲ全体が同一程度に引き伸ばされて居るのだったら、其ヒゲ玉をエグリ、又は丸鑢に貫き差して置いて、 ヒゲ箸にて外端を挟み、反対の方に引き伸ばしたらいいのである。 又、ヒゲの中央位から、外端が上下に曲がって居る場合には、其曲がり始めの所と、外端とを二本のヒゲ箸を使用して挟み、 前同様反対に引き伸ばして直す。併しどうしても完全に治すことが出来ない時、及破損したる時等には、 新品と取り替えるより外ないので、破損せるものは、絶対に修理不可能である。 又錆びたのも、時間の正確を期する上から、取り替へる必要があるが、安時計で、一日に一二分の相違は構わないと云ふ様なものなら、 其儘にして置いて宜しい。 ヒゲは錆ても油を付けることが出来ないから、湿気や手脂が付かない様注意を要する。

9. 天府真(天真)の修理

天真は、両ホゾが曲がり易いのであるが、大抵は真直に伸ばすことが出来る。 天真をヤットコで挟んで左手に持ち、火吹にて直接天真に吹きかけない様にして、天真より約二分位の所に吹きかけ、 ホゾが青色位になる迄焼を戻したら、極く小さい穴タガネで、製図に示されてある様にして真直に伸ばすのである。 学理的には、焼入焼戻を行わなければならないが、之は大分手数を要するから、大概の場合は其のままで宜しい。

折れたのは取替へなければならないのであるが、併し新品の入手が間に合わない時には、入ホゾをなすより外に仕方がない。 入ホゾ法や、天真の合わせ方に就いては後述する。

▲ ホゾの曲がりを直す

10. 天府輪

天府輪の破損せしものは、新品と取替えるより外ないのであるが、少し曲がったり、振れたりしたものは直すことが出来る。 之は振見器に掛け、指にて天府を廻して、振れや曲がりを発見し指にて直すのである。 天府輪ネジの破損紛失せしものは、之と同じ大きさで同じ重量のものを作り取付ける。 天府は必ず、調整されて居なければならないのであるが、之に関しては別途述べる。

出典 時計並蓄音機学理技術講義録 大阪時計学院
(大正時代)

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