2. 掛時計の掃除・組立
掃除
掛置時計用刷毛に揮発油を付けて、油や塵芥其の他の付着物全部を洗い落し、布片を以て綺麗に拭き取る。 此の布片は、毛立って綿毛が附着する様なのはいけない。 細かい瓦斯織りの毛立たない様なのを使用する。
ホゾ先は布片を蔽ひ、其の上より拇指と示指又は中指との間に確り挟んで、廻しつつ拭き取る。
歯車は外方に向って拭き取るのであって、横や内方に向って拭けば、歯に布片が引掛かって、糸毛を附着せしむる虞
刷毛にて洗ふ際、最も手を入れねばならない部分は、歯車やカナで、此所には決して何物も挟まったり、附着したりしない様、 洗って置く。ホゾ穴は懐中同様掃除木を入れて掃除する。
天真の受金は殊に良く掃除し、最後に又掃除木にて良く掃除する。 全舞は揮発油を少し付け布片でしごいて拭き取るのだが、内側の方の渦は、余り伸べたら後で切れる虞があるから、 此の辺は全舞を円錐形に押出して、内外両面より拭く。
掃除は熟練すれば、全部洗ってから之が乾かない間に拭き取る事が出来るのであるが、初めの内は中々難しく、 其の内に洗ったのは乾いてしまう様になるから、少し宛洗って拭くと云ふ具合にして段々慣らす。 全舞を掃除する時には、一番車軸より取外さず、其の儘やって宜しい。
組立
掃除が出来上がったら組立に取掛かる。 組立に際しては、第一に全舞を紐又は金の輪に入れ込む。 紐の大きさは余り小さかったら切れるし、大に過ぎたら邪魔になるから、先ず二番車の軸真位の大きさで宜しい。 之は糸紐でも麻紐でも構わないが、糸紐の方が毛立たずして使ひよい。 輪の大きさは、手の四本の指の元の方に、一巻きしたのより、少し大きい位(普通の掛時計の場合)でいいから、之を引解に結ぶ。 全舞の入れ方は、紐の結び目が丁度全舞の外端の柱に嵌まる輪の窪みの中に当たる様にして、外端より順次入れ込むのである。 左手で全舞を握り右手で巻き込んで行くのだが、右手で巻き込んだ丈は左手の指全部を利用して、 確実に次々に押へ込んで行かなければならない。 相当巻込んだる際、此の押へ込が悪かったならば、巻込んだ全舞は一時に飛び出し、 手其他に負傷する様なことがないとも限らないから、充分注意して確実にやる。
続きます・・・ 2008.5.12
出典 時計並蓄音機学理技術講義録 大阪時計学院
(大正時代の発行物)
