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掛置時計の基礎知識

2. 天府振アンクル エスケープメント

此の式の整動機は、懐中時計に於ける針アンクル即ちピンバーレットアンクルエスケープメントと殆ど同一なのであるから、 茲には説明を略するが、八角時計及びヘソ目覚時計に於ける整動機の一部に、少し許り異なりたる点があるから、 之に就いて説明をなす。

此の式のエスケープメントには、タボ座を有せず、タボ石は鋼の針金を使用し、天府の腕金に打込んである。 クレッセントは刺股の角がユツクリと通過する丈に、天府真を半分真直に切込んである。 そして普通のアンクル整動機に於ける様な、独立したる振切止がないと云ふことが、特に目立つのである。 それと同時に今一つ目立つものは、刺股の角が二重になって居ることである。 其の内側の角の間の切込が刺股であって、内側二本の角が即ち交互に振切止の作用をなし、外側の二本の角が副ユトリ止の作用をなし、 而してピンパリットは、ガンギ歯の歯底迄落込み、正ユトリ止の代用をなして、別に独立したるユトリ止栓がないのである。 従ってアンクル竿の動作角度が大で十六度である。 そしてアンクル竿の中央部が少し曲げられて居るのは、即ち振切止の調節を取る為であって、之を伸せば振切止は、 クレッセントに近寄り、反対に曲ぐれば遠ざかる。

此の角度即ち振切止は、天府真の切込が廻転して戻って来ない中には、天府真に遮ぎられて、決して通過せないが、 夫れが戻って来れば、切込に接触することなく、容易に通過すると云ふ程度でなければならない。

以上説明せし点が主として普通の針アンクルと異なるのであって、其の他の点は殆ど同一である。

掛置時計に於いては、タボ石、爪石其の他の部分も総て宝石を使用せず、金属を以て其の代用としてあるが、 特に高級の極く少数の時計には、やはり懐中時計同様に宝石を使用されたのもある。

出典 時計並蓄音機学理技術講義録 大阪時計学院
(大正時代の発行物)

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