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掛時計のビートスケール

1. 国産とユンハンス

振子の振りを見るために時計箱の背面下部に付いているT、Uと書かれた小さなスケールが ビートスケール(Beat Scale)とかビートインジケーターとか呼ばれる振り見板です。 三尺スリゲルと呼ばれるものには殆んどこれがついています。(名古屋ものの一部は付いていない) これは意外と見過ごされがちですが大切なポイントです。
文字板と振り玉、そしてこのビートスケールは3つでセットの物と考えてください。 ユンハンスに精工舎のビートスケールが付く事はあませんし、その逆も有り得ません。
ところがたくさん見るスリゲルの中にはこのありえないコンビがよく登場します。
これはどうした事でしょうか? 誰かが精工舎にユンハンスの機械を入れたり、またその逆をしたりするから・・と思われます。 それは一見、見た目は良くなりますがオリジナルとは程遠くなってしまいます。

精工舎はパリー以降の新型スリゲルには全て金属製メッキのスケールを採用しています。 琺瑯のビートスケールは明治43年以前の輸入琺瑯文字板に付いていたもの(外国製ビートスケール)以外は精工舎は作っていません。
名古屋ものはビートスケールの付いているものは金属製の物しか有りません。 金属製で同じメッキ物でも、名古屋ものはニッケルメッキのピカピカで、精工舎は梨地風のつや消し風と違いがあり、 後者のほうが質感が良いです。
ユンハンスは文字板が琺瑯の場合は全て振り玉板もビートスケールも同じ色、質感の琺瑯を使っています。 ドイツ製のもので、文字板に紙や紙にセルロイドを貼ったような文字板が時々有りますが、 この場合も振り玉とビートスケールは文字板と同じように紙かセルロイドを張った様な物になります。

文字板、振り玉、ビートスケール、このトリオの組み合わせが崩れた時に「おかしい?」・・と思わなければいけません。 精工舎の「ひさご」にユンハンスの機械を入れてバイオリン形といっているものを見ませんか?やっぱりおかしいですよね。

各社のビートスケールの特徴と大きさ、取り付け跡、釘や木ネジの位置や穴跡などを良く見ると オリジナルかどうかのヒントにもなります。

精工舎パリー

ニッケルメッキのビートスケールが木ネジ二本で止めて有ります。

名古屋商事スリゲル

ニッケルメッキのビートスケールが釘二本で止めて有ります。すこし雑ですね。

ユンハンスの琺瑯製

琺瑯製のビートスケールが木ねじ一本で止めて有ります。

名古屋水野時計(番外編)

大正末頃になるとスリゲルの琺瑯文字板もなくなってきますし、振り子もRA板の無いものになってきます。 例えばこの水野時計は、銀色文字板、振り玉は真鍮に金メッキ(RA板無し)、そして銀色ビートスケール は釘二本で止めという組み合わせです。

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